「人形は顔がいのち」でおなじみの吉德。
歴史は古く、江戸時代中期の元禄年間に、江戸浅草茅町(現・浅草橋)に初代治郎兵衛が人形玩具店を開業。
1711年(正徳元年)に、徳川6代将軍・家宣公より「吉野屋」の屋号を賜る。これを機に吉野屋治郎兵衛を名乗り、6代目以降は、代々吉野屋德兵衞を名乗る。
その後、社名もこの吉野屋德兵衞を略し「吉德」を正式社名とする。
1927年にアメリカの「青い目の人形使節」に対し、文部省(現・文部科学省)の委嘱で十世が指導者となり、答礼人形を企画製作、日本人形の国際的評価を高める。
また、戦前戦後を通じ宮内庁の御用を承る。1960年、現皇太子殿下ご誕生の際にもご注文を承り、以後も数々のご注文品を納入。
伝統を重視しながらも、現在の流行を採り入れ、常に新しい日本人形を発信し、業界をリードしている。
2011年には創業300年を迎え、江戸で最古の人形の老舗として現在に至る。
人形師
秋葉 聡
1975 年(昭和50年)東京都新宿区生まれ。中学、高校、大学は、「スポーツ一直線」という異色の作家。1999 年の株式会社吉徳入社をきっかけに、それまでに全く接点のなかった「雛の世界」に触れ、2年間の人形販売を経験後、人形製作の道に入る。人形作りの奥深さ・楽しさを体感しつつ研鑽を重ね、2012年に節句人形工芸士に認定される。
現在、作家として雛人形を製作・発表する傍ら、株式会社吉徳において取り扱っている人形の企画・コーディネートも担当。お客様に喜んでいただける雛人形をお届けしたいと日々努力している。
インタビュー
MAHOROBA店長が、秋葉聡さんへインタビュー。
お人形へのこだわりについてお伺いしました。
ご自身の作品を製作される際に心がけているポイントは何でしょう?
今の生活様式にあった人形を作る事を心がけています。飾り台の間口が小さくても全体のシルエットがスリムに美しく見えるようにする、などです。なので、着せ付けの技術だけでなく、衣裳の生地選びも大事です。例えば正絹などできるだけ薄くてやわらかな生地を選ぶなど。
なるほど、イマドキのニーズに向けた開発を重視されているということですね。その他こだわりはありますか?
お人形は小さくなっても人間らしさ、リアリティがなくてはならないので、可能な限り上着を実際の着物と同じように6枚接ぎにする、など工夫をしています。
つぎに、吉徳様で扱われているお人形全体のお話ですが、「顔がいのちの吉徳」が有名なキャッチコピーになっていますが、顔へのこだわりのポイントを教えてください。
基本的にオリジナルの顔を採用している事と、そのレパートリーの幅を広く持っているところだと思います。
顔は職人さんに依頼してオリジナルを製作して頂くのですが、かなり細かく注文を出します。古風な京風の顔、関東風の少しおっとりした顔、現代風のふっくらして目の大きめの顔など、そのタイプ毎に、言葉では表しきれない"吉徳らしさ"を求めます。
あとは衣裳との組み合わせでどの顔の雰囲気と合うか、お人形一つずつをデザイナーと決めていきます。毎年新作のお人形だけで約600種類の生地選びを行うんです。
選んでいくところはもう感覚というか感性の世界ですね。300年の歴史の厚みを感じます。
おすすめポイント
吉徳さんのお人形は何と言ってもまずは顔の良さだと思います。様々なブランドのお人形をみていますが、吉徳さんのお人形の場合、その顔を見るたびにその美しさに引き込まれ、呼吸を忘れるような感覚になります。
京九番(飾り間口90cm程度用)と言われる大きさ以上のお人形の顔は大きいのでより強く感じるはず。近年、生活様式に合わせてお人形も小さく省スペース化しているので中々難しいと思いますが、一度大きめのお人形を手に取って見て頂きたいと思います。
その他のおすすめポイントはシルエットの綺麗さ。座った姿が正確な左右対称で、胸を凛と張っていて姿勢が良く、神々しさを感じます。
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